「摂食嚥下障害」とは
摂食嚥下のリハビリを実施するにあたって
一口に摂食嚥下障害と言っても、その特徴や障害のパターンなど症状は様々です。そのため患者の症状によってリハビリテーションの方法や進め方等が異なってきます。そこで摂食嚥下リハビリテーションの実施に先立ち、まず正しく症状を評価する(分析する)ことが重要です。
摂食嚥下の評価
問診やスクリーニングテスト(摂食嚥下障害を有するか否かを大まかに判断する簡便なテスト)にて摂食嚥下障害ありと判定され、更なる精査が必要と判断された場合には以下の精密検査を実施します。
※摂食嚥下障害を有する患者さん全員に行うわけではありません。覚醒の程度や検査に耐え得る全身状態であるか等を考慮して適応の判断を行います。
嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing:VF)
嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing:VE)
摂食嚥下のリハビリ
間接訓練(基礎的訓練)
食物を用いずに行う基礎的訓練です。誤嚥や窒息のリスクが少なく訓練適応は広いですが、訓練によっては指示理解が不良な患者には実施困難なものもあります。
直接訓練(摂食訓練)
実際に食物を用いて行う訓練です。間接訓練に比べ、実際に食物を用いるため、嚥下諸器官がよりバランスよく動くように訓練できます。特に安全性に配慮しながら訓練を進める必要があります。
当院の特徴
特徴①
施設によっては嚥下内視鏡検査のみ実施するということも少なくありませんが、当院では基本的に嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査を両方セットで実施いたします。これはそれぞれの検査の持つ特性が異なるため、両方の検査の結果を合わせて評価を行う方がより正確に症状を捉えることが出来るからです。
特徴②
当院では2003年以降、延べ約2000例の嚥下造影検査・嚥下内視鏡検査を実施してきました。検査実施後はその結果をチーム(医師・リハビリテーションスタッフ・看護師・管理栄養士・歯科医師・歯科衛生士・放射線技師など)で共有し、リハビリテーションプログラムを作成しています。なお、当院の嚥下チームには摂食嚥下に関する専門スタッフが在籍しています
特徴③
ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)に代表される輪状咽頭筋(食道入口部)開大不全に対して「バルーン拡張法」や「OE法(間欠的口腔食道経管栄養法)」という間接訓練があります。当院ではこれらに対して積極的に取り組んでおり、高い治療実績を有しています。
特徴④
当院では食形態を細分化し、一人一人の摂食嚥下能力に合った食事を提供できるよう努めています。直接訓練を進めていく上で、個々の患者さんにとってより適した食形態を使用できることは重要な要素といえます。